― “いまの私”と、うまくつきあう練習。 ―
看護師として日々たくさんの患者さんと関わる中で、
「もしもっと早く気づけていたら、違っていたかもしれない」
そんな場面に何度も出会ってきました。
そして気づいたのは、それは人ごとではなく、自分自身にも当てはまるということ。
40代になって、体や心のちょっとした変化に敏感になりはじめて、
“未病”や“整える”という言葉が、だんだんと自分ごとになってきました。
いま私は、ピラティスを学びながら、
もう一度、自分の体と心と丁寧に向き合おうとしています。
変わりたいけど、変われなかったあの頃
SNSに映る、きれいで前向きな人たち。
そんな投稿を見ては、心がざわついていた時期がありました。
「私なんて、住む世界が違う」
「なにをやっても続かない。ぐうたらな自分が嫌になる」
「もっと頑張れたら、何かが変わるんだろうか…でも、どうせできっこない」
体重や服のサイズに一喜一憂して、
鏡や写真に映る自分の姿に落ち込むことも多くありました。
洋服屋さんの試着室で感じた、あの沈んだ気持ちは今でも忘れられません。
30代半ばくらいまでの私は、数字や見た目ばかりを基準にして、自分を判断していました。
何度も向き合ってきた「変わりたい気持ち」
私が体と向き合うようになったのは、ピラティスがきっかけというよりも、
長年にわたるダイエットや運動の経験が積み重なって、自然とそうなっていったのだと思います。
成功も失敗も、何度も繰り返してきました。
20kg以上の減量をしたこともあります。
痩せるたびに少し自信が持てるようになって、
リバウンドするたびに「まただ…」と落ち込んで。
そんな自分にがっかりして、責める気持ちが強くなっていた時期もありました。
でも、その過程のなかで、少しずつ視点が変わっていった気がします。
「どう見えるか」ではなく、「今の私はどう感じているか」に、意識が向くようになったのです。
今日は体が重いな、とか、呼吸が浅いな、とか。
そうした“感覚”に気づいて、その日の自分に合ったペースを選ぶようになっていきました。
そして気がついたら、「変わりたい」と強く思うことは、なくなっていました。
今になって思うのは、
たぶん私は、本当に変わったから、あのときの“変わりたい気持ち”から離れられたのだと思います。
“私らしさ”って、なんだろう?
私は昔から、本を読むのが大好きです。
正統派の小説も、少しクセのある村上春樹さんの作品も好き。
心理学や哲学、東洋医学、スピリチュアル、量子力学、仏教の教えなど、
「自分とは何か」を知りたくて、ジャンルを問わず夢中で読み続けてきました。
オーディオブックにも夢中になりました。
通勤の合間や家事をしながら本を“聴く”のが日常になり、
その言葉たちは、自分の考え方や感じ方に深く影響を与えてくれたと感じています。
「私らしさ」の話で、いきなり本?と思われたかもしれません。
でも私が伝えたいのは、思い込みを“思い込み”と気づくことの大切さです。
私にとってそれは、本を通して得たものでした。
自分の中の固定観念や、世界の狭さに気づかせてくれたのは、
本の中にいた、たくさんの人たちの“考え”や“生き方”でした。
いろんな価値観があることを知ることで、
「こうあるべき」が少しずつほどけていったように思います。
正解は一つじゃない。
だから、他人と比べる必要もない。
“私らしさ”は、探し出すものではなくて
日々の中で、さまざまな考えや経験に触れながら、
自分の「大切にしたいこと」に気づいていくことで、
少しずつ育っていくものなのかもしれません。
本当は、数字よりも“感覚”を大切にしたい
40代になって、若い頃との違いをはっきり感じるようになりました。
疲れがとれにくかったり、回復に時間がかかったり。
体の変化を受け止めるのが、以前よりずっと難しくなってきた気がします。
以前の私なら、「年だから仕方ない」と自分に言い聞かせたり、
「やっぱりダメだな…」と落ち込んでしまうことが多かったと思います。
でも今は、それもひとつの変化として、少しずつ受け入れられるようになってきました。
もちろん、体重が気になったり、思わずため息が出る日もあります。
それでも、自分を責めることは以前よりずっと減りました。
たとえば、今日は運動をしようと思っていたけれど、
体がなんとなく重い…そんな日もあります。
そんなときは、無理せずに少しだけ動いてみる。
「それでもできた私、よくやった」と声をかける。
調子が良い日には、少し負荷をかけてみる。
そんなふうに、“今の自分”に合わせて過ごすことを大事にしています。
それは、甘えでもわがままでもなくて、
「自分をちゃんと大切にしてあげること」なんだと、今は思えるようになりました
おわりに
「ちゃんとしなきゃ」と思っていたころの私は、
いつもどこかで、自分にダメ出しをしていました。
でも今は、「よく頑張ってたね」と思えるようになりました。
完璧じゃなくていい。少しずつでいい。
“私らしいリズム”で歩いていけばいい。
数年前、ストイックなダイエットでキープしていた体重から、自分を解放したことがありました。
当時はとても怖かったし、「またダメ人間に戻ってしまった」と思っていました。
でも今は、それが“リバウンド”ではなく、「私らしさ」への道だったのだと分かります。
遠回りしても、もがいても、その過程があったからこそ、今の自分がある。
そう思うと、昔の自分に心から感謝したくなります。
これからも、“ちゃんと”より“心地よく”。
数字より、感覚。
他人の評価より、自分の本音。
そんなふうに、これからも“私らしく”生きていきたいと思っています。